平素つね)” の例文
林藏も刀の柄元を握詰め喉をいておりますから、如何どういう事かと調べになると、大藏の申立もうしたてに、平素つねからおかしいように思って居りましたが、かねて密通を致し居り
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
野生わたくしうちへおいで下さりますると、ああもったいない、雛形はじきに野生めが持ってまいりまする、御免下され、と云いさまさすがののっそりも喜悦に狂して平素つねには似ず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といかに貧しく暮せばとて、十四や十五の小娘の、口から出やうことばとも、思はれぬほど気のつくは、これも平素つねからとやかくと、母に代はりて世帯の苦労を、させらるる故と知られたり。
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と云ひさま流石ののつそりも喜悦に狂して平素つねには似ず、大袈裟に一つぽつくりと礼をばするや否や、飛石に蹴躓きながら駈け出して我家に帰り、帰つたと一言女房にも云はず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)