市塵しじん)” の例文
放生池の水は、つつじの花と緑をうつして、今朝も市塵しじんの外にあった。大鳥居の下で、手綱を右馬介に預け、彼一人で赤橋を渡って行く。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今もなお血みどろな模索もさくを続けている範宴にとっては、そういう市塵しじんや人混みの中に、自分の探し求めているものがあろうなどとは絶対に思えなかったのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁和寺にんなじの十四大廈たいかと、四十九院の堂塔伽藍どうとうがらん御室おむろから衣笠山きぬがさやまの峰や谷へかけて瑤珞ようらく青丹あおにの建築美をつらね、時の文化の力は市塵しじんを離れてまたひとつの聚楽じゅらくをふやしてゆくのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)