崢嶸そうこう)” の例文
想うに麓の大森林を失って劒岳の孱顔さんがんは、階老の侶を先立ててにわかに憔悴した人のように、金剛不壊の額にも幾条か崢嶸そうこうの皺が増したことであろう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あざやかなべに滴々てきてきが、いつの雨に流されてか、半分けた花の海はかすみのなかにはてしなく広がって、見上げる半空はんくうには崢嶸そうこうたる一ぽう半腹はんぷくからほのかに春の雲を吐いている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
独り立山連峰のみは日本アルプスに於ける万年雪の一大宝庫たる名をほしいままにす可きあらゆる条件をそなえて、崢嶸そうこうたる峰巒を飾るに、白雪燦然たる四個の大カールと
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)