島々しましま)” の例文
広河内の土地のありさまは、中央日本アルプスの聖境、上高地の中、島々しましま方面から徳本とくごう峠を下り切った地点に、よく似ている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
三時頃嘉門次のせがれ嘉与吉が来たからこの案内を頼む、彼は都合上島々しましまに行って来ると言って、十五日を登山日と定める、二日間滞在中穂高行の同志が四名増して一行五名。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
先ず槍ヶ岳へと志して島々しましまに行ったが、一人で登るのは熊が多いから危険であるといわれてついに断念したのは、今考えると実に遺憾で、せめて上河内かみこうちから穂高へ登るきであった。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
松本から島々しましままでの電車でも時々降るかと思うとまたれたりしていた。行手の連峰は雨雲の底面でことごとくその頂を切り取られて、山々はただ一面に藍灰色らんかいしょく帷帳とばりを垂れたように見えている。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二十日 松本市より島々しましままで馬車、島々谷を溯り、徳本とくごう峠をえ、上高地温泉に一泊。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その時島々しましまで穂高へ登ったらよかろうといわれたのですが、そんな名も知らない山へ登ったところがしようがないというのでとうとう登らなかったのは今から考えると甚だ残念です。
木曾御岳の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
神河内の在るところは氷柱つららの如き山づたいの日本アルプスの裏で、信濃南安曇郡が北にちぢまって奥飛騨の称ある、飛騨吉城よしき郡と隣り合ったところで、南には徳本とくごう峠——松本から島々しましまの谷へ出て
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
御昼食後、島々しましまへの道を徳本峠に向って御出発になる。途中明神池を御見物なさる御予定であったが、梓川の増水で橋が流れ、河童橋を迂廻しなければ対岸へ渡れないので、これはお止めになった。