山館やまだち)” の例文
邸内は、豪族の山館やまだちとして、いいぶんのないほど広い。表は金剛への、山街道に面し、裏は深い断層をなした崖下を、千早川が流れていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女はつき当りの杉戸をあけて、低い階だんを降り、また廊を行って、山館やまだちづくりの階をいくつも降りた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらにはまた、祝朝奉家の本拠、独龍岡の山館やまだちの前へも、何らさえぎるものなく来てしまった。——見ればほりり橋を高く上げ、門扉もんぴかたくとざして、山城一帯はせきとして声もない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)