届書とどけしょ)” の例文
旧字:屆書
届書とどけしょを出す時、種類という下へ混血児あいのこと書いたり、色という字の下へ赤斑あかまだらと書いた滑稽こっけいかすかに胸に浮んだ。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして見れば、嶺松寺の廃せられた時、境内の無縁の墓が染井共同墓地にうつされたというのは、遷したという一紙の届書とどけしょが官庁に呈せられたに過ぎぬかも知れない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お豊は長吉が久しい以前からしばしば学校を休むために自分の認印みとめいんを盗んで届書とどけしょを偽造していた事をば、暗黒な運命の前兆である如く、声までひそめて長々しく物語る……
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「どういう人物だか、詳しくお話下さらんので、われわれには正体が分りませんが、とにかく家出人の捜査申請そうさしんせいは本庁でも毎日受付けて居りますから、どうぞ届書とどけしょを出されたい」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正規のとどけも出さないまま、自分勝手にされたものであることが判明しましたので、本部の塚江事務官が大きに狼狽しまして、大急ぎで届書とどけしょを出して正規の手続きをしてもらうように
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
*2 戸口調査名簿 ピョートル大帝によって一七二二年に創始され、一八六〇年までに十回にわたって行われた一種の国税調査に、その都度つど地主から政府に提出した農奴数の届書とどけしょをいう。