小手毬こでまり)” の例文
この春彼女が東京へ立って行った頃にはライラックと小手毬こでまりが満開で、さつまうつぎや八重山吹はまだ咲いていなかったが、今はもう霧島や平戸も散ってしまい
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その時、私も庭を歩いて見た。小手毬こでまりの花の遅いのも咲いていた。藤棚の下へ行くと、池の中の鯉のおどるのも見えた。「こう水があると、なかなか鯉は捕まらんものさネ」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その向うにささやかな築山つきやまがあって、白い細かい花をつけた小手毬こでまりが、岩組の間から懸崖けんがいになって水のない池に垂れかかり、右の方のみぎわには桜とライラックが咲いていた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
花壇の周りを一と廻りして、池のみぎわのライラックや小手毬こでまりの枝をしらべてみたりしてから、そこへけて来た鈴を抱き上げて、円く刈り込んである梔子くちなしの樹のところにしゃがんだ。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)