ひた)” の例文
旧字:
おおあの、あれは、あれこそ、ひたすらに燃えさかり、埋もれた、ささやかな、然し各々の精根を傾けた生活の歌だつたのだよ。
逃げたい心 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そのままにひたと思入るのみなりし貫一も、やうやなやましく覚えて身動みじろぐとともに、この文殻ふみがら埓無らちなき様を見て、ややあわてたりげに左肩ひだりがたより垂れたるを取りて二つに引裂きつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「おお善光寺裏!……私は、そこへ行きたかつたのです。あの貧乏徳利は自然人の栄光ある芸術ですよ。ただひたすらに生活が唄つた詩ですよ」
逃げたい心 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
人のうるささのみをひたすらに忌み嫌ふ私は、露骨に苦りきつた嫌悪の表情を表はして、寧ろ軽蔑を、——或ひは、「私は貴女と一緒には一秒といへども歩きたくない」