寝牀ねどこ)” の例文
旧字:寢牀
西洋にはシセロ説に寝牀ねどこの下に鶏卵一つかくされあると夢みた人が、判じに往くと、占うて、卵が匿され居ると見た所に財貨あるべしと告げた。
あの鼠色の寐惚けたような目を見ては、今起きて出た、くちゃくちゃになった寝牀ねどこを想い浮べずにはいられない。
彼がそんな風な童話めいた空想にふけり、酔ひ、弄んで居る間に、彼の妻は寝牀ねどこの下で鳴くこほろぎの声を沁み沁みと聞きつつ、別の童話に思ひ耽つて居るのであつた。
鶏の居ない夜だけ、鎖から放して置くことにした犬が、今ごろ、田のあぜをでも元気よく跳びまはつて居るかと想像することが、寝牀ねどこのなかで彼をのびのびした気持にした。
彼は寝牀ねどこに這入つたが、妻にむかつて、今見たところのものを仔細しさいに説明した。彼の妻は最初からそれを否定した。いかに明るくとも月の光で、そんなにはつきりと見える筈はない。