寒山拾得かんざんじつとく)” の例文
寒山拾得かんざんじつとくは生きてゐる。永劫えいごふ流転るてんけみしながらも、今日猶この公園の篠懸の落葉を掻いてゐる。
東洋の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おれはとうの杖を小脇にした儘、気軽く口笛を吹き鳴らして、篠懸の葉ばかりきらびやかな日比谷ひびや公園の門を出た。「寒山拾得かんざんじつとくは生きてゐる」と、口の内に独りつぶやきながら。
東洋の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
古怪な寒山拾得かんざんじつとくの顔に、「霊魂れいこんの微笑」を見たものは、岸田劉生きしだりうせい氏だつたかと思ふ。もしその「霊魂の微笑」の蔭に、多少の悪戯あくぎを点じたとすれば、それは冬心の化け物である。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
馬琴の眼は、この淡彩の寒山拾得かんざんじつとくに落ちると、次第にやさしいうるほひを帯びて輝き出した。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「やあ、又寒山拾得かんざんじつとくが歩いてゐるな」と云つた。
寒山拾得 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)