もなく家財は残らず売払うりはろうて諸道具もなければ金もなし、赤貧せきひん洗うがごとくにして、他人の来て訪問おとずれて呉れる者もなし、寂々寥々せきせきりょうりょう
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第二に、寂々寥々せきせきりょうりょうたる場所に多き事情あり。第三に、死人ありし家、久しく人の住まざりし家、神社仏閣、墓畔ぼはん柳陰りゅういんのごとき場所に多き事情あり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
右を見ても左を見ても、人かげがない、寂々寥々せきせきりょうりょう、まれに飛びすぐるは、名もなき小鳥だけである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ぶんぶんという鳴弓の声、戞々かつかつという羽子はごの音。これがいわゆる「春の声」であったが、十年以来の春のちまた寂々寥々せきせきりょうりょう。往来で迂濶うかつに紙鳶などを揚げていると、巡査が来てすぐに叱られる。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いわんや婦人にいたっては寂々寥々せきせきりょうりょうたるものであった。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ぶんぶんという鳴弓の声、かっかっという羽子はごの音。これがいわゆる「春の声」であったが、十年以来の春の巷は寂々寥々せきせきりょうりょう。往来で迂闊うかつに紙鳶などを揚げていると、巡査が来てすぐに叱られる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)