宛転えんてん)” の例文
ことに宛転えんてんたる嬌音きょうおんをもって、乾燥なる講筵こうえんに一点の艶味えんみを添えられたのは実に望外の幸福であります。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くだんの経文に〈この道人、頭破れ血したたり、床座を沾汚てんおす、駆りてすみに入らしむ、急を得て糞を失す、次第七人、皆打棒せられ、地に宛転えんてんす〉とあるから転化したのだ。
おもうにこれただ一例のみ。高材逸足の士、出頭の地を求めんと欲す、万一知己ちきに遭う、あるいはなり。もし遭うあたわずんば、彼らは利器をいだいて、拘文死法の中に宛転えんてんたらざるべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
和して聞ゆる一曲の管声が、今も宛転えんてんとして満野のうちに流れているのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
首尾あいたぐう、因って両頭蛇という、余これを視てその尾端けだし首に類して非なり、土人いわくこの蛇すなわち老蚯蚓の化けしところ、その大きさ大蚓を過ぎず、行は蛇に類せず、宛転えんてん甚だ鈍し