孩児がいじ)” の例文
旧字:孩兒
そういう新しい人間としてはわれわれはまだほんの孩児がいじのようなものである。したがって期待されるものはニュース映画の将来である。
ニュース映画と新聞記事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ちょっとした手当で今まで人事不省になっていた孩児がいじが泣き出す、もうこれでよいなどというと、母親が感謝して帰るというようなことは幾度となくあった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
とつおいつ思いあぐねるうち、いよいよ無力の孩児がいじとしての感じを自分に深めて来た老翁は、いまは何もかもかなぐり捨て、ひたすら娘にすがり付き度くなった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その深くくだんの黒髪の孩児がいじを抱きて秘かに産室をよろぼいで、跣足はだしのまま数マイルを歩行して、翌日の正午親里に帰り着きしが、家人のすきを窺いて玄関横の応接間に入り
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
孩児がいじの頃より既に音律を好み、三歳、痘を病んで全く失明するに及び、いよいよ琴に対する盲執を深め、九歳に至りて隣村の瞽女ごぜお菊にねだって正式の琴三味線の修練を開始し、十一歳
盲人独笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
経めぐって来た永い歳月を元へ投げ戻されてただ無力の一孩児がいじとにしか感じられない。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やがて月満ちて生れし孩児がいじを見れば、眉目清秀なる王のたねと思いきや、真っ黒々の黒ん坊なりしかば王妃の驚き一方ひとかたならず、そのまま悶絶して息絶えなむばかりなりしはもありなむ。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遂にこの訴訟は従男爵コンラド氏の敗訴となり、アリナの霊と、従男爵の血によりて生まれたる孩児がいじの扶助料、及び、その実父に対する慰藉料として巨額の財産を分与して結着を見たりとなり。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)