孤客こかく)” の例文
終りには肩をすぼめて、恐る恐る歩行た。雨は満目まんもく樹梢じゅしょううごかして四方しほうより孤客こかくせまる。非人情がちと強過ぎたようだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「馬いななきて白日暮れ、剣鳴て秋気来る」と小声で吟じ、さて、何の面白い事もなく、わが故土にいながらも天涯の孤客こかくの如く、心はびょうとしてむなしく河上を徘徊はいかいするという間の抜けた有様であった。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)