嬌態けうたい)” の例文
それから毎日夕方になると、必ず混血児あひのこの女は向うの窓の前へ立つて、下品な嬌態けうたいをつくりながら、慇懃いんぎんにおれへ会釈ゑしやくをする。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
背低くの胴に圓屋根まるやね赤く、さながら娼妓の嬌態けうたいと髮飾りを思はせる劇場
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
鏡の間の壁に嵌めた無数の鏡は、女の艶姿えんし嬌態けうたいを千万倍にして映じ出だした。庭園には女の軽々とした歩みの反響がし始めた。己が晩年にち得た、これ程の楽しい月日は、総て是れ御身の賜ものだ。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
夕方になると、又向うの家の二階の窓には、絹のキモノを着た女が現れて、下品な嬌態けうたいをつくりながら、慇懃いんぎんにおれへ会釈ゑしやくをする。が、おれはもうその会釈には答へない。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)