おむな)” の例文
藤原南家にも、常々、此年よりとおなじやうなおむなが出入りして居た。郎女たちの居る女部屋までも、何時もづか/\這入つて来て、憚りなく物語つた。あの中臣志斐媼なかとみのしひのおむな——。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
荒々しい声と一しょに、立って、表戸と直角かねになった草壁の蔀戸しとみどをつきあげたのは、当麻語部たぎまのかたりおむなである。北側に当るらしい其外側は、まどを圧するばかり、篠竹しのだけが繁って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
今、当麻たぎま語部かたりべおむなが、神憑りに入るやうに、わな/\震ひはじめたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
一旦、口がほぐれると、老女は止めどなく、しゃべり出した。姫は、この姥の顔に見知りのある気のしたわけを、悟りはじめて居た。藤原南家にも、常々、此年よりとおなじようなおむなが、出入りして居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)