妻児さいじ)” の例文
白糠の宿に帰ると、秋の日が暮れて、ランプのかげ妻児さいじが淋しく待って居た。夕飯を食って、八時過ぎの終列車で釧路に引返えす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と思うと、怒れる神のひたいの如く最早真闇まっくらに真黒になって居る。妻児さいじの顔は土色になった。草木も人も息をひそめたかの様に、一切の物音は絶えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
縁から見ると、七分目にった甕の水がまだ揺々ゆらゆらして居る。其れは夕蔭に、かわかわいた鉢の草木にやるのである。稀には彼が出たあとで、妻児さいじが入ることもある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)