妓夫ぎふ)” の例文
はじめさんのお父さんは京一の仙州楼の本番口の妓夫ぎふをしていた。お母さんも家で、玩具問屋の註文の風船つくりの内職をして、家計を補っていた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
これは東栄が所謂いわゆる性悪しょうわるをして、新造花川にそむいたために、曲輪くるわの法でまゆり落されそうになっているところである。鴫蔵しぎぞう竹助の妓夫ぎふが東栄を引き立てて暖簾のれんの奥に入る。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その家にはみせ妓夫ぎふが二人出ていた。大きい洋燈らんぷがまぶしくかれの姿を照らした。張り見世の女郎の眼がみんなこっちにそそがれた。内から迎える声も何もかもかれには夢中であった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
雪の夜深け、待合からの歸り道に、老車夫が身の上話しを聞いた。夏の午過ぎを大河端に釣する隱居樣と話をした。渡し場の船頭と友達になつた。箱屋と並んで歩いた。妓夫ぎふと口論をもして見た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
仕方が無いから、苦情やら忌味いやみやらを言はれ/\、三里の山道を妓夫ぎふを引張つて遣つて来て見ると家の道具はもう大方持出して叩き売つて仕舞つたので、これと言つて金目なものは一つも無い。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)