天稟てんりん)” の例文
又この男の空想が如何にも豊富で、一種天稟てんりんの威力を持つてゐるので、己の霊はそれに引き入れられるやうであつた。
この望みはかれが不屈の性と天稟てんりんの才とをもってしては達し難きものにあらず。かれはこれを自信せり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
年齢としはその頃十九だったが、容貌きりょうもよし性質も至って温雅な娘でまたことの方にかけてはすこぶ天稟てんりん的なので、師匠の自分にも往々おうおう感心する様なことがあったくらいだ。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
大方、いかに河内介の享楽を求める心が切であっても、天稟てんりんの美質を宿す松雪院の悲歎と悔恨とを眼の前にしては、再び彼女を冒涜ぼうとくする勇気が出なかったのであろう。
これに加うるに手工細技さいぎ天稟てんりんの妙を有する我が国女工を以てす、あたかもりょうつばさを添うが如し、以て精巧にこれを製出し、世界の市場に雄飛す、天下如何いかんぞこれに抗争するの敵あるを得んや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
技術の上には前いう如く天稟てんりん的だし当人も非常に好きなものだから技術は日に増し上達する。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
ありていに言えば天稟てんりんの直覚力が鋭利である上に、郷党が不思議がればいよいよ自分もよけいに人の気質、人の運命などに注意して見るようになり、それがおもしろくなり、自慢になり
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)