天真てんしん)” の例文
旧字:天眞
自分が悪くした妻から、幸福を求めるのはおしが強過ぎるじゃないか。幸福は嫁に行って天真てんしんそこなわれた女からは要求できるものじゃないよ
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おお、その天真てんしんの声の何と、お燕の泣き声とそッくりなことだろう。父を責める子の声に、市十郎は耳をふさいだ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親は云う事を聴かないと、うちを追出して古井戸の柳へ縛りつけるぞと怒鳴どなって、爛熳らんまんたる児童の天真てんしんを損う事をばかえりみなかった。ああ、恐しい幼少の記念。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
けれど、その文字の、天真てんしんらんまんで、なんの、見えも、小細工もなく、大らかな、気ままいっぱいな筆つきであることにも、何か、びっくりさせられた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
境勝固天真 きょうすぐれることはもとより天真てんしんにして
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)