天保山てんぽうざん)” の例文
大坂行幸の新帝には天保山てんぽうざんの沖合いの方で初めて海軍の演習を御覧になったとのうわさの残っていたこと
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
船が天保山てんぽうざん燈籠台とうろうだいを左に過ぎるまでは帆柱を立てないので、水夫かこは帆車や帆綱を縦横にさばき、川口を出るとたんにキリキリと張り揚げるばかりに支度をしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天保山てんぽうざんの安宿の二階で、何時いつまでも鳴いている猫の声を寂しく聞きながら、私はんやり寝そべっていた。ああこんなにも生きる事はむずかしいものなのか……私は身も心も困憊こんぱいしきっている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
各国公使はこの陸よりする途中の混雑を避けて、大坂天保山てんぽうざんの沖までは軍艦で行くことにしてあった。英国公使パアクスの提議で、護衛兵の一隊をも引率して行くことにした。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
左の小高い丘に天保山てんぽうざんの燈籠台、右舷うげんのすぐ前に安治川屋敷の水見番所みずみばんしょ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三軒家や四貫島しかんじまや、天保山てんぽうざんのあたりは、見物がたいへんだった。よしだか人間だかわからないほど両岸に市民が立っている。艦上には、三藩の兵が、ささつつをして、五卿は烏帽子えぼし直垂ひたたれで立っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)