大風雨おおあらし)” の例文
慶応元年六月十五日の夜は、江戸に大風雨おおあらしがあって、深川あたりは高潮たかしおにおそわれた。近在にも出水でみずがみなぎって溺死できし人がたくさん出来た。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「戦争の騒ぎだけでもたくさんなところへ、こないだのような大風雨おおあらしじゃ、まったくやり切れない。とかく騒がしいことばかりだ。半蔵も気をつけて行って来るがいいぞ。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今夜、いよいよ死ぬという約束で、影のうすい男と女とは長い日のくれるのを待っていると、宵からの雨がやがて恐ろしい大風雨おおあらしになった。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昌平丸を作る時分には、まだ螺旋釘ねじくぎを使うことを知らない。まっすぐなくぎばかりで造ったもんですから、大風雨おおあらしの来た年に、品川沖でばらばらに解けてこわれてしまいました。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なにしろ古い家で、奥の方はだいぶいたんでいるところへ、一昨々年さきおととしの秋の大風雨おおあらしに出逢ったので、どうしても大手入れをしなければならない。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その詮議がむずかしくなっては面倒であるから、もうそろそろ見切りを付けようかと云っている時、八月十二日から十三日にかけて大風雨おおあらしがつづいた。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四年前の大風雨おおあらし、二年前の大コロリ、それにも増したる大きいわざわいが江戸中に襲いかかって来るに相違ない。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その十二日から十三日にかけて大風雨おおあらし、七月の二十五日にも風雨がありましたが、今度の風雨はいっそう強い方で、屋根をめくられたのも、塀を倒されたのもあり
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その祭礼ちゅうに九月十五日の大風雨おおあらしがあって、東京府下だけでも丸つぶれ千八十戸、半つぶれ二千二百二十五戸という大被害で、神田の山車小屋などもみな吹き倒された。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二日ふた晩もつづいた大風雨おおあらし……。一昨々年さきおととしの風雨もひどかったが、今度のは更にひどい。こんな大暴れは三十年振りだとかいうくらいで、町も近村もおびただしい被害でした。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半鐘はんしょう見梯子みばしごというものは、今は市中に跡を絶ったが、私の町内——二十二番地の角——にも高い梯子があった。ある年の秋、大風雨おおあらしのために折れて倒れて、凄まじい響きに近所を驚かした。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)