夕餐ゆふげ)” の例文
半町ばかり行つて復た振返つて見ると、未だ友達は同じところに佇立んで居るらしい。夕餐ゆふげの煙は町の空を籠めて、悄然しよんぼりとした友達の姿も黄昏たそがれて見えたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わが歌は冬の夕餐ゆふげのちにして林檎しつゝよみにける歌
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
涙ぐましき夕餐ゆふげとはなる。
巡礼紀行 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
夕餐ゆふげひらきそむらし。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
上の渡し近くに在る一軒の饂飩屋うどんやは別に気の置けるやうな人も来ないところ。丁度其前を通りかゝると、軒をれる夕餐ゆふげの煙に交つて、何かうまさうな物のにほひがうちの外迄も満ちあふれて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夕餐ゆふげの煙は靜かな町の空へ上つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)