売卜者うらない)” の例文
その時の籤はそんなに悪くもなかったが、三十過ぎるまでは、心に苦労が絶えないというようなことは、一、二度売卜者うらないにも聞かされた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
女中のある者は名高い売卜者うらないのところへ走った。表面はあくまでも秘密を守っているものの、屋敷の内輪は引っくり返るような騒動であった。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くだん売卜者うらない行燈あんどうが、真黒まっくろな石垣の根に、狐火かと見えて、急に土手の松風を聞くあたりから、そろそろ足許が覚束なくなって、心も暗く、吐胸とむねいたのは、お蔦の儀。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは恐れ入ります……宜うございますわたくしは死にます/\、私は蔵前の売卜者うらないて貰っても、お伺いをしても寿命が短かい、目の上に何とかいう黒子ほくろが現われてるといいましたが
以前はここらで売卜者うらないなどをしていたが、ひとり娘が容貌きりょう望みできぬた村の豪家の嫁に貰われたので、今では楽隠居のように暮らしているというのです。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この忠義ものは、二人のうれいを憂として、紺屋から帰りがけに、千栽ものの、風呂敷包を持ったまま、内の前を一度通り越して、見附へ出て、土手際の売卜者うらないて貰った、と云うのであった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)