壮年わかもの)” の例文
旧字:壯年
愛する娘のお雪が、どういう壮年わかものと一緒に、どういう家を持ったか、それを見ようとして、遙々はるばる遠いところを出掛けて来たのであった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしこれから若く成って行くのか、それとも老境に向っているのか、その差別のつかないような人で、気象のさかんなことは壮年わかものに劣らなかった。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見たところ丑松は純粋な北部の信州人——佐久小県さくちひさがたあたりの岩石の間に成長した壮年わかものの一人とは誰の目にも受取れる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
K君は背の低い、快活な調子の人で、若い細君を迎えたばかりであったが、行く行くは新時代の小諸を形造る壮年わかものの一人として、土地のものに望を嘱されている。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相生町あひおひちやうの坂の方からは、送別の旗を先に立て、近在の壮年わかものらしい連中がいづれも美しく飾つた馬に載せられて、村の人達に前後を護られながら、静々しづ/\と引かれて来た。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
未来の夫としてお俊がえらんだ人は、丁度彼女と同じような旧家に生れた壮年わかものであった。ふとしたことから、彼女はその爽快そうかいで沈着な人となりを知るように成ったのである。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
停車場前の空地には、既に馬から下りて、見送りの人々に挨拶する壮年わかものもあつた。斯の混雑の中をくゞり抜けて、私は途中で一緒に成つた広岡学士と共に塾の体操教師を探した。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
師はやがて昔の弟子でしを花畠に近い静かな書斎の方へ導いた。最早入歯をする程の年ではあったが、気象のさかんなことは壮年わかものにも劣らなかった。長い立派なひげは余程白く成りかけていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こやおけを肩に掛けて、威勢よく向うの畠道を急ぐ壮年わかものも有った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)