壊疽えそ)” の例文
前年の秋から膝関節に炎症をおこしていたが、四十一年の正月匆々壊疽えそになり、正蔵を写了すると同時に脚部の切断手術をした。
新西遊記 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
親戚の者は笑って相手にしなかったところが、何の病気もない健康なその娘が二十三になると、突然肺壊疽えそか何かで二三日で死んでしまった。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
小さな血管の栓塞せんさいを起して組織を壊疽えそに陥れますから、どうしても血液の凝固を妨げる工夫をするより外に道はありません。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ガス壊疽えそだということは戦地の病院で診断されました、帰還して来て、半年ばかり軍の病院にいたんですが、ご存じのとおり体に違和は感じないし
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
外部から放たれているものでないことは、とうに明らかなんだし、燐の臭気はないし、ラジウム化合物なら皮膚に壊疽えそが出来るし、着衣にもそんな跡はない。まさしく皮膚から放たれているんだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
気がつきますと、左腕の切口を、アダンの蔓で強く縛ったままにして置いたので、そこから壊疽えそがはじまり、そのにおいだったのであります。
手紙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
病因はガス壊疽えそである、すでに治療の手段はなく死を待つばかりとなった、今日まで続けて来た研究も、現在の自分にはもう情熱がもてなくなった。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仙台で矢崎舎人に使いさせたとおり、こんどは老中評定までもってゆく、壊疽えそという病にかかったら、その足なり手なりを早く切り放さなければ、たちまちその毒が全身に廻って死をまねくという。