塩山えんざん)” の例文
旧字:鹽山
長いトンネルを出ると初鹿野、ここから塩山えんざんまでの間に白峰は見えるはずだ。席を左に移して窓際に身をピッタリ。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
「行って見給え、江戸からのお客というのを途中で迎えて、それを案内してあの辺の名所を見物し、その帰りに塩山えんざんの湯にでもつかってみるも一興であろう」
よくきくと、それは何でも塩山えんざんの駅の近くに雑貨店を営んでいる割合暮し向きのいい、古田という家の主人から、母を後妻にと望んで来たことからの話らしかった。
二時間ばかりたち、勝沼かつぬまから塩山えんざんあたりの山村が窓の外をユックリと走りすぎていきます。
歩くこと (新字新仮名) / 三好十郎(著)
自分は昨年塩山えんざんの停車場で、白ペンキ塗の広告板に、一の宮郷銘酒「白嶺」と読んで、これは「雪の白酒」ではあるまいか、さぞ芳烈な味がすることであろうと思った、また他で製糸所の看板に
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
石和で腹をこしらえた米友は、差出さしでの磯や日下部くさかべを通って塩山えんざん宿しゅくへ入った時分に、日が暮れかかりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
塩山えんざん駅に着いたのは午後の二時頃だった。雨がどしゃ降りに降っていた。
「しおの山とは塩山えんざんのこと、差出さしでの磯はわたしの故郷八幡村から日下部くさかべへかかる笛吹川の岸にありまする」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母は他家に嫁いでいるとはいえ、もとの塩山えんざんの家ではなかった。
大正十何年の五月、甲斐かいの国の塩山えんざんの駅から大菩薩峠だいぼさつとうげに向って馬を進めて行く一人の旅人がありました。
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここは塩山えんざんを去ること三里、大菩薩峠のふもとなる裂石さけいし雲峰寺うんぽうじでもその噂であります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雲水どもは土地の百姓たちと力を併せて、濁流の岸へ沈枠しずめわくを入れたり、川倉かわくらを築いたり、火の出るような働きです。ここの手を切られると、水は忽ち日下部くさかべ塩山えんざん一帯に溢れ出す。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
神尾の下屋敷から脱することを得たムク犬は、山へも逃げず、里へも逃げず、首に鎖と縄を引張ったまま只走ひたばしりに走って、塩山えんざん恵林寺えりんじの前へ来ると、直ぐにその門内へ飛び込んでしまいました。
「八幡村というのは、石和いさわ塩山えんざんに近いところではないか」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)