埠頭場はとば)” の例文
冬でもの笠を被つて濱へ出て、餌を拾つて、埠頭場はとばに立つたり幸神潟かうじんがたの岩から岩を傳つたりして、一人ぼつちでよく釣漁つりをしてゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
余は横浜の埠頭場はとばまで見送つてハンケチを振つてわかれを惜む事も出来ず、はた一人前五十銭位の西洋料理を食ひながら送別の意を表する訳にもゆかず
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
道理でつい此間埠頭場はとばで彼等を迎へた時に比べるとまるで趣きが変つてゐた——と滝本は気づいた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
すこしはなれたところでは、アントワープの少年団が入選した名誉ある友達を大さわぎをしてとりかこみながら、これからその埠頭場はとばの家まで威勢よく送って行こうとしているところでした。
小母さんも初やもいっしょに隣村の埠頭場はとばまでついて行ったのだそうである。夕方の船はこの村からは出ないのである。初やは大きな風呂敷包みを背負って行った。も少し先のことだという。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
冬でもの笠をかぶって浜へ出て、えさを拾って、埠頭場はとばに立ったり幸神潟こうじんがたの岩から岩を伝ったりして、一人ぼっちでよく釣魚をしていた。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
私は二階の欄干てすりもたれて、この病人船が埠頭場はとばともづなを解いて、油を流したやうな靜かな初秋の海を辷つて行くのを、恐しい思ひを寄せて見たことがあつた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)