城砦とりで)” の例文
「二人ながら紙帳を出るな! ……紙帳こそは拙者の家、わが城砦とりで、この中にそちたちいる限りは、拙者身をもって護ってとらせる! 出たが最後、拙者関係かかわらぬぞ!」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はい、屹度さうです。ほかへ行くのではありませんよ、ダニーロの旦那! でなければ、あんな方角へ曲る筈がありません。だが、城砦とりでの辺で見えなくなりましたよ。」
うねりのように起伏した緑の芝生の上に、城砦とりでのごとくに張り出した突端……そこにはアカンザス模様の円柱に蔓草つるぐさが一杯にまつわり付いて、藤蔓ふじづるが自然の天井のように強烈なる陽をさえぎっておりました。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
築かれ行く城砦とりでである
城砦とりでを囲んで永遠の眠りに沈んだやうな森が、二人を呑んでしまつたのだ。と、上の小窓がほんのりと明るくなつた。その下に佇んだ二人の哥薩克は、どうして攀ぢ登らうかと思案にくれた。