埋地うめち)” の例文
にわかに、埋地うめちの闇や水明りの船岸ふなつきに、ワラワラと人影がうごき出す中を、一散に、船待ふなまち小屋へ目がけてきたのは、竹屋三位卿。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
広い闇を抱えた埋地うめち船岸ふなつきには荷主や見送りの提灯がいッぱいだ。口々にいう話し声が、ひとつの騒音となってグワーと水にひびいている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天神の船待小屋までは、あのつづらに身をひそめていたが、じっと中から埋地うめちの空気を察していると、どうやらそこの安全でないのを感じた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまでは澄明ちょうめいを持ちこたえて聖域へじのぼる一心に何ものの障碍しょうげもあらじと思い固めて来た決心も、いったん心の底に響きをあげて埋地うめちのような陥没かんぼつを見てしまうと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汐入しおいりから日本橋へゆく道は、新しい市街の幹線道路なので、わりあいに歩きよいが、それでも、石や材木をつんだ牛車がひっきりなしに通るのと、人家の普請ふしんや、埋地うめちの土運びなどで、足もとも悪く
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)