土竜もぐらもち)” の例文
旧字:土龍
「茂兵衛だって、鳥や土竜もぐらもちじゃありませんよ。あの箱の中のような庭からどこをどう逃げ出したというんで? え、親分」
「あたしが起きてるのに、眠るって法があるの。土竜もぐらもちみたいに、布団の中に頭からもぐりこんでさ……。お起きなさいったら。起きて頂戴よ。」
溺るるもの (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しばらく駿河台するがだいの方の下宿へ出ていたその女とは、年にも大変な懸隔へだたりがあったし、集まって来る若い男も二、三人はあったが、土竜もぐらもちのような暗い生活をしている女の堕落的気分が
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あたかも土竜もぐらもちが叫ぶがような声を出す、「やつらの太陽ときたら気の毒なものだ!」
この一言いちごんを聞いた時、自分はくそでもくらえと思った。誰が土竜もぐらもちの真似なんかするものかと思った。これでも美しい女にれられたんだと思った。あなを出れば、すぐ華厳けごんたきまで行くんだと思った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天道様てんとうさまの届かない、土地の底の穴の中なら、お上のお目こぼしもあるとしたものでしょう、——一番今晩一と晩だけ、土竜もぐらもちの真似をして、皆川様御夫婦の忠義にお手伝いしましょう