四歳よつつ)” の例文
この二人が運んで行くのに余る大阪行の人数である時には、がた馬車がよく雇はれて来ました。私はその時分満四歳よつつ位だつたと思ひます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
二人ともせい/″\四歳よつつになつたばかりかと思はれる。大きな椰子の根上りした、その鬚だらけの根元に立つてゐるので、餘計に小さく見えるのであらう。
「あんたの四歳よつつの時に死んだお父つあんはなア、……」と、母が泣き顏をして言ひかけては、後を止めてしまつた言葉の破片かけらが殘りなく拾はれたやうな氣がした。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私の物心ついた頃、既に高田家に老人としよりが無かつた。私の家にもなかつた。かすかに記憶えてゐる所によれば、私が四歳よつつの年に祖父おぢいさんが死んで、狭くもない家一杯に村の人達が来た。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
取り亂した化粧部屋にはただひとり三歳みつつ四歳よつつの私が𢌞まはりながら何ものかを探すやうにいらいらと氣をあせつてゐた。ある拍子に、ふと薄暗い鏡の中に私は私の思ひがけない姿に衝突ぶつつかつたのである。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
と今年四歳よつつになる長女が、妻のベンチから鼻聲を鳴らしてゐる。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「文吾はん、あんたの四歳よつつの時に死んだお父つあんはなア、あれは、……」
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)