嗜好このみ)” の例文
武家の堅苦しい娘などよりも、砕けた市井の女のほうが、わしの嗜好このみに一致する。水戸様石置き場の空屋敷に出入りを
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
アタシはとりわけご婦人のご案内をいたしますのに妙を得ていますんで、ご婦人のお嗜好このみなら、どんなことでもちゃんと承知しているつもりなんですヨ。
二度目となり、三度目となれば、もう真実ほんとうの結婚とは言われない。若いうちから長く一緒に居たものは、自分の経歴も知っていてくれるし、自分の嗜好このみも知っていてくれるし……。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お浦を是非とも出せというのだ。……ああいう女に心を引かれる? 嗜好このみというものは変なものだな。……出してあげたくてもあの狂人女きちがい、とらえられないのだから仕方がない」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中肉中身長血色よく、病身などとは思われない、衣裳の嗜好このみは地味の黒色。丹前姿の時もある。広い額だということは、氏が博士だという事にって、非常に合理的に解釈出来よう。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
表附きの下駄をはく——というのが熊太郎の嗜好このみだったそうで、今日もそういう姿であり、身長五尺八寸あり、肉附きよく色白皙はくせき、大酒を好んで顔赧ずめりと、文献に記してあるところから推すと
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
本店みせつとめて荷作りをしたり、物を持ってお顧客とくい様へお使いをしたり、番頭さんに睨まれたり、丁稚でっちに綽名を付けられたり、お三どんに意地悪くあたられることは、どうにも私の嗜好このみに合わない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どなたの嗜好このみにも合わないと見えるな」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嗜好このみに合いませんとも、妾にはね」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嗜好このみに合わない年恰好さね。
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)