当時まだ牛乳は少なくとも大衆一般の嗜好品でもなく、常用栄養品でもなく、主として病弱な人間の薬用品であったように見える。
そして、それは嗜好品としてはかなり珍重されるが、大量に売れるものではないということが、しだいにはっきりして来たのであった。
その上に味もよくなり、色もいよいよ美しくなって、幸か不幸か嗜好品としての資格を、だんだんと具備するようになってきたのである。
光線を奪えば光線、空気を奪えば空気を、活動、音声、嗜好品、それらは、それが奪われるまでは第二義的であっても、奪われると同時に、それは一切第一義的な欲望に変わるのだ。