嗜好品しこうひん)” の例文
当時まだ牛乳は少なくとも大衆一般の嗜好品しこうひんでもなく、常用栄養品でもなく、主として病弱な人間の薬用品であったように見える。
コーヒー哲学序説 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして、それは嗜好品しこうひんとしてはかなり珍重されるが、大量に売れるものではないということが、しだいにはっきりして来たのであった。
その上に味もよくなり、色もいよいよ美しくなって、幸か不幸か嗜好品しこうひんとしての資格を、だんだんと具備するようになってきたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
湯水の他の飮料ゐんれうとは如何なるものなりしや。鳥獸魚介てうぢうぎよかいの煑汁も其一ならん。草根木實そうこんもくじつよりりたる澱粉でんふんたるものも其一ならん。或はさけたる嗜好品しこうひん有りしやも知る可からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
光線を奪えば光線、空気を奪えば空気を、活動、音声、嗜好品しこうひん、それらは、それが奪われるまでは第二義的であっても、奪われると同時に、それは一切第一義的な欲望に変わるのだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「なにしろいまはきみ、さけにしんが高級嗜好品しこうひんになっちまった時代だからね」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)