命令いひつ)” の例文
時の警視総監は刑事中での腕利うできゝとして知られてゐたガストン・ワルゼエといふ男にこの宝石荒しの探偵を命令いひつけた。
『まァ、可厭いや動物どうぶつだこと、ひと命令いひつけたり、ひと學課がくくわのやりなほしをさせたりして!』とあいちやんはおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
道の細くなつたり、坂になつた所になりますと私等は車を降りて歩きました。ある丘のやうになつた村では、従兄が母に命令いひつかつて湯葉ゆばを買ひに行きました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
村井は六を呼んで財布から一円紙幣を二枚出して、之で『かしわ』を買つて来いと命令いひつけた。栄一は村井の財布を一寸見たが金が大分這入つてゐた。村井は栄一よりも金持だ。
鼈甲縁の大きなる眼鏡の中より微なる眼の光りを放たれて、何の経やら論やらを黙〻と読み続けられけるが、いよ/\塔の建つに定つて例の源太に、積り書出せと圓道が命令いひつけしを
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ルウベエは南仏蘭西の田舎生れだが、それでもお国料理の魚羹ブイヤベースのやうな物は滅多に命令いひつけた事は無かつたし、美味うまいものをこしらへると相応に味はつて呉れたものだ。