呉蓙ござ)” の例文
島民家屋の丸竹を並べたゆかの上に、薄いタコの葉の呉蓙ござを一枚敷いて寝ていた時、私は、突然、何の連絡も無く、東京の歌舞伎座の
前甲板に呉蓙ござを敷いて天幕の張つてある處に座をとつて私はそこから四方を顧望してゐた。
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
毎朝、彼が母屋おもやの中央の贅沢な呉蓙ござの上で醒を覚ます時は、身体は終夜の労働にぐったりと疲れ、節々ふしぶしがズキズキと痛むのである。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
湿った空気のそよとも動かぬ部屋の中で、板の間の呉蓙ござの上に疲れた身体をぐったりと横たえ、私は昼寝の眠りに入った。
食卓には今度も美味佳肴びみかこううずたかく載っている。妻は筋骨の逞しい申し分の無い美人だし、章魚たこの木の葉で編んだ新しい呉蓙ござの敷き心地もヒヤヒヤと冷たくて誠に宜しい。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)