名刺なふだ)” の例文
「そうでございます」松蔵はそこで気がいて、「それでは、早う往け、安吾やすごさんは役所へ寄って、早川はやかわさんから名刺なふだをもろうて往くがええ」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
侍「いやお前の店には決して迷惑は掛けません、兎に角此の事をぐに自身番に届けなければならん、名刺なふだを書くから一寸ちょっと硯箱すゞりばこを貸して呉れろ」
婦人おんなの癖に園田勢子と云う名刺なふだこしらえるッてッたから、お勢ッ子で沢山だッてッたら、非常におこッたッけ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と、名刺なふだを示し、すぐ次に、輪王寺の執事から取って来た、不伝への追放状を見せた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……初めに叱られた時、素直にタバコを放つて了ひやはれやよかつたんやが、袂から名刺なふだ出して、『おらこんなもんや』なんてえらさうに言やはつたさかい、ぼろくそに言はれはりましたんやが。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
寺役人は、おどろいたような眼で、もう一度、かれの名刺なふだを読み直した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、だまって、寺役人に、を通じた。刺とは、名刺なふだのことである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)