同時いっしょ)” の例文
子供だけは平生いつもその小溝を飛び越えているので、老人と同時いっしょに飛び越えようとすると、老人はあぜへべったりと坐りこんで
虎杖採り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
忠義無類の花村様、なんで主命を拒絶ことわるものか。謹んでお受けをしたそうだ。正しくはお受けはしたけれどそれと同時いっしょに花村様は一つ条件を出されたそうだ。条件というのは他でもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
坐ると同時いっしょで、ただ一室ひとまだからそこがしとねの、むしろのような枕許へ膝を落して、覗込のぞきこんだが、あわただしく居直って、三布蒲団みのぶとんを持上げて、骨のあおいのがくッきり見える、病人の仰向けに寝た胸へ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其処には児を抱いた若い女が児と同時いっしょに死んでいるのを、晋陽の府廨やくしょから来たやくにん検案けんあんしているところであった。廷章は狂気きちがいのようになって叫んだ。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彭は友人と同時いっしょに帰ってきたが、女のことが諦められないので、翌日は朝から孤山の麓へ行って、彼方此方と探して歩いたがどうしても判らなかった。
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しにきたのです、私は死んでますけれども、家内も出来てますから、それも同時いっしょに伴れてきて、お母さんの苦労を分けさします、どうか安心してください
水莽草 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その時ちょうという孝廉があって、その女が歿くなって葬式をしたところで、一晩おいて盗賊の為に棺を破られ死体と同時いっしょに入れてあった宝物も共に奪われた。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)