あくび)” の例文
と泥だらけの駒下駄こまげたはきし両足をぶらぶらさせ大きなあくびする顔を鏡に映して見てゐる様子かへつてあどけなし。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
だ方々へ行ったのだけれど、其を一々書くと夜半よなかまでかかる。又鮒のようにあくびが出始めたから、是でお仕舞にしよう。夕飯までに写真を皆配って帰って来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ええひどい蚊だ」ひざのあたりをはたとてり。この音にや驚きけん、馭者は眼覚めさまして、あくびまじりに
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言うので、銀子も去就に迷い、生咬なまがみのあくびを手で抑えるのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
唯児をつくる機械と見るは愛国者の説たるに似たり。有ればうるさく無ければ不自由とはわけ知った人の嘆息にして茶飲み友達とはあくび取り交す相手の異名ならんか。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)