口利くちき)” の例文
かかる席につらなりては、口利くちきくだにずかしきものを、いざさらば帰るべしとて、思うままに言いののしり、やおらたたみ蹶立けたてて帰り去りぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
村の相当の口利くちききがおびに出て来ても文句を言わさず、それもぴしぴしと縛り上げられてしまうのだから手がつけられません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馬琴の清右衛門は必ず町内の学者でもあり口利くちききでもあったに相違なく、硯友社の札を掛けたあたりは大方おおかた清右衛門の世話になっていたろうと思う。
親族のなかに口利くちきき役がそろって、用件はやはり留守役のことだった。……かれらもまた口をそろえて清胤の非をなじった。親族一統の面目にかかわるとまで云いたてた。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
通例ただ村の「口利くちきき」というくらいの意味で、何か事件のあるとき、前に出て、一言いわずにはおられないタイプの人間で、機会さえあれば上手にヒュッと口を出す。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と余計な事を言いたがるも村での口利くちきき、一度は村会議員に出たほどの人物なんめり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)