取計とりはからい)” の例文
自分で忰の事をかれこれ申すのはなものだが、忰は事理わけの分った奴で、けっして後で御迷惑になるような取計とりはからいは致しますまい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親方は自分の取計とりはからいに対して、誰一人異論を唱える者のないのを見てとって、すっかり酔が発して、ずうっと一座を見渡したが、片隅に腕を組んで
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
庄屋宇賀祐之進うがすけのしん取計とりはからいで、初は九人を一人ずつ農家に分けて入れたが、数日の後一軒の空屋に八人を合宿させた。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
でもとより処分法は校長のお考えにある事だから、私の容喙ようかいする限りではないが、どうかその辺をご斟酌しんしゃくになって、なるべく寛大なお取計とりはからいを願いたいと思います
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明日切腹候場所は、古橋殿取計とりはからいにて、船岡山ふなおかやまの下に仮屋を建て、大徳寺門前より仮屋まで十八町の間、藁筵わらむしろ三千八百枚余を敷き詰め、仮屋の内には畳一枚を敷き、上に白布をおお有之これありそろよしに候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
留学中書信にて東京奉職の希望を洩らしたる友人(大塚保治おおつかやすじ氏)の取計とりはからいにて、殆んど余の帰朝前にまりたるが如き有様なるを以て、遂に浅学を顧みず、依托を引き受くる事となれり。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)