取的とりてき)” の例文
万力は男世帯で、家には黒松という取的とりてきがいるだけです。その黒松に手伝わせてお俊の首を斬り落とし、死骸は床下に埋めました。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこへ、自分たちの贔屓ひいきの旦那が、難儀に逢っているというようなところから、相撲小屋から関取連が、取的とりてきをつれてせつけて来る。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湯帰ゆあがりに蕎麦そばめたが、この節あてもなし、と自分の身体からだ突掛つっかけものにして、そそって通る、横町の酒屋の御用聞ごようききらしいのなぞは、相撲の取的とりてきが仕切ったという逃尻にげじりの、及腰およびごし
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
関取から取的とりてきまで、食事のドンブリや鍋に何か御馳走を運んできたり、お酒をぶらさげてきたり賑やかだったが、その一人に十両の墨田川というのは私の同じ町内、同じ国民学校の牛肉屋の子供で
青鬼の褌を洗う女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その大きいかすり単衣ひとえを着ていると、私は角力すもう取的とりてきのようである。あるいはまた、桃の花を一ぱいに染めてある寝巻の浴衣ゆかたを着ていると、私は、ご難の楽屋で震えている新派の爺さん役者のようである。
服装に就いて (新字新仮名) / 太宰治(著)