収穫とりい)” の例文
旧字:收穫
音吉が百足の頭部を、そしてわたしが尾端を恭しくさゝげ霜柱を踏みながら、収穫とりいれの済んでゐる芋畑の丘に登つた。
山峡の凧 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
せっせと二人でいたものをようや収穫とりいれられる時が来たのか、それほど二人の愛情が熟して来たのか
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
豚共は家を焼き、果樹を切り、勝手放題をしているではないか。彼等はかざるに刈り、蒔かざるに収穫とりいれておるのだ。併し、神は君達の為にサモアの地にそれを蒔かれたのだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
はや後悔のかてにと収穫とりいれられぬ
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
間もなく収穫とりいれの季節も終り、吹雪川ふぶきがはの水も氷結して水車小屋の仕事も冬期休業の時になつたので、酒場の宴会も三日置きが五日となり、七日、十日と間を置くやうになつた。
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
同級の学生は思い思いにいたものを収穫とりいれようとしていた。又た、せっせと播けるだけ播こうとして、互いに種卸たねおろすことを急いでいた。気早な連中の間には早や卒業論文の製作が話頭に上って来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)