せし)” の例文
ちょろりとせしめて出て行ったきり、色町へ入りびたって、七日も十日も帰らなかったことなども、今さらのように言い立てられた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
傷ついた蜃は呂湖に帰る途上で死んだとまであって跡がないが約束通りぐっすり礼物をせしめただろう、『続捜神記』から『法苑珠林』に引いた話にいわく
昼間のうちに六三郎から死骸を埋めた場所を聞いて置いたので、日の暮れるのを待って忍んで行って、ひと足さきにその熊の胆をせしめてしまったのです。いや、どうも悪い奴で……。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)