千種川ちぐさがわ)” の例文
それッと、たちまち城兵は、引きあげと見た新田勢へ追い打ちをかけて来る。——ために千種川ちぐさがわの渓谷は、死屍に埋まり、血に染まった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の前の事件と云うのは、一閑斎が病気になる二た月ばかりまえ、天文二十一年の十二月千種川ちぐさがわの合戦の際で、その時も弾丸は一閑斎の顔の前面を、横に一線を描いて走った。
千種川ちぐさがわ上流のけわしい渓谷をはさんで、苔縄こけなわとりでと白旗城のふたつが、いわゆる牙城がじょうのかたちをしており、攻めるほど、味方は死傷をかさねるばかりだったのだ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今晩、脇山から見ておりますと、ただならぬ早駕はやの灯が、千種川ちぐさがわをこえ、御城下へと入りました。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本街道なら珍しくもないが、播州路からわかれて高取越たかとりごえを経た上、千種川ちぐさがわ渡船わたしをこえてこの城下へと入る赤穂街道を、一かたまりの提灯ちょうちんが、暁闇ぎょうあんの中を走って来るのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)