千疋屋せんびきや)” の例文
モナミだか千疋屋せんびきやだかで、テーブルの上のガラスのびんをこわしたことがある。ボーイがきて、六円いただきます、と言う。
二十七歳 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ただし、ケチで、そうしているのではない証拠には、毎朝、銀座の千疋屋せんびきやへ寄って、季節にかかわらず、飛切り上等のリンゴを一個だけ買った。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
戦争中にも銀座千疋屋せんびきやの店頭には時節に従って花のある盆栽が並べられた。また年末には夜店に梅の鉢物が並べられ、市中諸処の縁日にも必ず植木屋が出ていた。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
けれども、但馬さんの熱心なとりなしで、どうやら見合いまでにはぎつけました。千疋屋せんびきやの二階に、私は母と一緒にまいりました。あなたは、私の思っていたとおりの、おかたでした。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
後年服毒した夜には、隣室に千疋屋せんびきやから買つて来たばかりの果物籠が静物風に配置され、画架には新らしい画布が立てかけられてあつた。私はそれを見て胸をつかれた。慟哭どうこくしたくなつた。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
丸ビルの千疋屋せんびきやいちごクレイムを食べながら、葉子は涙ぐんでいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「何でしょう? 分りました。千疋屋せんびきやのメロンですね?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
春の夜や不二家ふじやでて千疋屋せんびきや
寺田先生と銀座 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)