医師いしや)” の例文
旧字:醫師
それは静子の学校仲間であつた平沢清子が、医師いしやの加藤と結婚する前日であつた。清子と信吾が、余程以前まへから思ひ合つてゐた事は、静子だけがよく知つてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夜が清々すがすがと明放れた頃には、智恵子はモウ一人で便所にも通へぬ程に衰弱した。便所は戸外そとにある。お利代が医師いしや駆付かけつけた後、智恵子はこらへかねて一人で行つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二百十日が来ると、馬のある家では、泊懸とまりがけ馬糧ばれうの萩を刈りに山へ行く。その若者が一人、山で病付やみついて来て医師いしやにかかると、赤痢だと言ふので、隔離病舎に収容された。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然うか。』と言つて、またわざとらしく、『然うか、加藤といふ医師いしやがあつたんだな。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
隣村から応援に来た最一人もひとりの背のヒヨロ高い巡査、三里許りの停車場所在地に開業してゐる古洋服の医師いしや赤焦あかちやけた黒繻子の袋袴を穿いた役場の助役、消毒器具を携へた二人の使丁こづかひ、この人数にんず
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)