匍伏ほふく)” の例文
今日の日暮れまでには、立ち還りに、難波へ行って来る、と歯のすいた口に叫びながら、郎女の竪帷に向けて、庭から匍伏ほふくした。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
初め五六たびは夫人もちょいとたてついて見しが、とてもむだと悟っては、もはや争わず、韓信かんしん流に負けて匍伏ほふくし、さもなければ三十六計のその随一をとりて逃げつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
むかし淮陰わいいんの少年が韓信かんしんあなどり韓信をして袴下こか匍伏ほふくせしめたことがある。まちの人は皆韓信かんしん怯懦きょうだにして負けたことを笑い、少年は勝ったと思って必ず得々とくとくとしたであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
高徳は地に匍伏ほふくしたまま、みゆるしを待っていた。いつまでも地の冷えに耐えていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)