剛胆ごうたん)” の例文
それは色の蒼醒あおざめた恐ろしい顔であった。三左衛門はびっくりしたが、剛胆ごうたんな男であったから何も云わずに僧の顔を見た。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
勝入の武勇も剛胆ごうたんも、秀吉はよく知っている。しかし、それ以上には、秀吉は買っていない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆえに一言でも話頭はなしが彼の弱点にわたると、胸中幾分か狼狽ろうばいするの風情ふぜいが現れ、今までたのもしい剛胆ごうたんなる青年と思われたものが、見すぼらしい凡人に立ち返り、勇将が一時に敗兵となった観を呈した。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もし、忠盛が、臆病者おくびょうものであったら、かならず過って、罪もない坊主を斬り殺していたにちがいない。剛胆ごうたん沈着ちんちゃく、武者たる者は、よろしくかれの如きであれ——と、いうのである。
日ごろ、剛胆ごうたんをもって鳴らして来た男だけに、剛胆をもって自負している。摂津守せっつのかみ荒木村重は、そうした人物であった。細かい神経とか、鋭覚な時代認識とか、そんなものは至極彼とは縁が遠い。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)