凝固かたまり)” の例文
白昼凝って、ことごとく太陽の黄なるを包む、混沌こんとんたる雲の凝固かたまりとならんず光景ありさま。万有あわや死せんとす、と忌わしき使者つかいの早打、しっきりなく走るはからすで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その代り腹へ入って胃液のために凝結ぎょうけつしたり、あるいは外の酸類にあって凝結するから胃と腸とがその凝固かたまりいて消化させるまでに何ほどの手数をかけるか知れない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
岸へぎ寄せて、枳殼垣からたちがきへ引つ掛けたのを見ると、まぎれもなくそれは、緋縮緬ひぢりめん扱帶しごきで、斑々としてしぼぞめのやうに薄黒くなつてゐるのは、泥に交つた古い血の凝固かたまりだつたのです。
と、思うと、草の中に、黒い凝固かたまりが、動いていた。胸がはだけて、血が見えていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)